〜車椅子の介助に活かせる“勾配の体感”〜
生活支援の現場で、車椅子介助の際に大切なことのひとつが「坂道の対応」です。特に、
「急な坂道では、進行方向と反対を向いて下りる」
これは教科書にも出てくる程の基本動作ですが、ふと疑問が湧きました。
「そもそも、“急”ってどれくらい?」
その疑問を確かめるため、実際に坂道を作り、勾配ごとの感覚を“体験”してみました。この記事では、支援員の皆さんが日々の支援で迷いやすい「どこからが危険か」のヒントをお届けします。
この記事はこんな方におすすめ
- 「急な坂道ってどれくらい?」と気になっていた
- 勾配を“感覚”と“数字”で結びつけたい
- 利用者さんにも介助者にも安心な支援を目指している
実験の概要|自作の坂道で勾配を体験!
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自宅にあった木材を使って、長さ2mほどの坂道を作成。そこに手動式の介助型車椅子を使用し、「勾配1%ずつ」坂道をつけながら体感してみました。
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✅ 勾配とは?
100m進んで1m上がる=勾配1%
→ 今回は「2m進んで2cm上がる」で1%ずつ再現

使用した材木の厚み(2cm、4cm)を活かして、段階的に角度を増やしていきます。
※勾配の計算には「TOM’s Web Site」様のツールを利用
※ヘルメット・膝パッド装着で安全に実施
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実験①|勾配 0〜3%:「ゆるやかな傾斜」
勾配 | 使用者としての感覚 | 介助者の判断 |
---|---|---|
0% | 完全に平坦 | 特に意識なし |
1% | 「言われれば…?」程度 | 坂とは気づかない |
2% | 見た目は傾斜と分かるが、怖さなし | 後ろ向きの必要性は感じない |
3% | わずかに動き出す感じあり | 後ろ向きにするかは微妙な判断 |
💡 このあたりまでは「急」と感じないが、ご利用者さん視点ではすでに“動き出す不安”が出てくる場面も。
実験②|勾配 4〜6%:「不安を感じはじめる傾斜」

勾配 | 使用者としての感覚 | 介助者の判断 |
---|---|---|
4% | ブレーキをかけていても“滑りそう”な不安 | 状況によっては後ろ向き介助を検討 |
5% | 明らかに“下る”感覚。板の上では滑ることも | 後ろ向きが安心 |
6% | 坂に乗ること自体に怖さあり | “このまま下るのは危険”と判断できるレベル |
🧠 「そろそろ反対を向いた方がいいかも」という感覚は、4%あたりからはっきりしてきます。
実験③|勾配 7〜10%:「急な坂」と明確に感じる傾斜

勾配 | 使用者としての感覚 | 介助者の判断 |
---|---|---|
7% | ハンドリムを持っていないと怖い | 車椅子が勝手に進む可能性あり |
8% | いるだけで不安。制動力が足りない | 可能なら単独介助は避けたい |
9% | 完全に“滑り落ちる”危険を感じる | 実際に支えるのも大変 |
10% | 実用的ではない。事故リスクを強く感じる | できれば通らないのが理想 |
⚠️ このレベルになると、もはや「急」ではなく「危険」と言える傾斜。
考察|「急な坂道」の目安と対応の判断

実験を通して私が感じたのは、以下のポイントです。
- “勾配4%”から「不安」が生まれる
- 6%以降は「後ろ向きでないと危険」と感じる
- 使用者目線の方が、見た目以上に怖さを感じる
🚩【支援の目安】
「どちらかが少しでも不安を感じたら、迷わず反対を向いて下りる」
この判断が、安全への最短ルートかもしれません。
まとめ|“感覚”で支援の精度を高めるために
今回は、「急な坂道とはどれくらいか?」をテーマに、坂道を自作して車椅子で体験した記録をご紹介しました。
- 4%前後から恐怖感が出てくる
- 勾配を“数字と感覚”で結びつけることができた
- 安全確保のためには、坂を感じたら「早めに後ろ向きになる」のがベスト
あくまで個人の体験ですが、支援員として「体感しておく」ことは、いざという時の判断力につながります。この記事が、どこかの支援現場で役立つヒントになれば嬉しいです。
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