生活介護事業所の現場で、「ご利用者さん本人や、ご家族さんには、専門用語をできるだけ使わずに話す。」ことを意識して仕事をしている生活支援員の皆さん。
専門用語を使わずに話せば話すほど、相手だけでなく自分自身も混乱してしまって、結局何について話していたか見失ってしまう…。
そんな経験はありませんか?
この記事は、
・生活介護事業所の職員さん
・新人研修を担当することになった中堅職員さん
・「わかりやすく説明する」が苦手な人
におすすめです。
今回は専門用語を分かりやすく言い換えるときのポイントと、私が実践している「専門用語をわかりやすく言い換える方法」をご紹介します。
前半は専門用語について、後半は言い換えのテクニックについて書いています。
専門用語とは
個別支援計画、支援手順書、ASD、QOL、ADL、エンパワメント、社会モデルと医療モデル…。
「え? これも専門用語だったの?」
というものも含めると、障害者福祉の世界には専門用語がたくさんあります。チーム支援などで連携する、高齢者福祉や医療、教育や行政の専門用語も含めると、その数はかなりのものになります。
また、理学療法士を「PT」、作業療法士を「OT」と言ったりする略語も、専門用語と言えます。
私の職場では、「今日はフリーです」は「今日は送迎車に乗る業務はありません」を指しています。「私の職場」という集団の中で通用する言葉なので、これも狭義に専門用語の部類になると考えて良いでしょう。
いくら同じ職場に勤めていても、ベテランさんと新人さんの知識量が同じということはありません。
いざ現場で働いていて、
・職場という「ある集団」のなかで「通用するはずの言葉」が通用しない
・共通の理解がないから簡潔に話が進まない
といった状況になってしまうのはそのためです。
⇒【関連記事】『「生活介護事業所の生活支援員」の仕事はココが大変』
なぜ専門用語を使うのか
なぜ専門用語を使う必要があるかを考えるために、「専門用語がなかったらどうなるか」を考えてみましょう。
例えば、「レスパイトケア」という言葉があります。
もし、レスパイトケアという言葉がなかったら、ケース会議などで「〇〇さんのお母さんに、一時的に介護から離れて、心身ともにリフレッシュするための支援の導入が必要ではないでしょうか。」と、実にたくさんの情報を伝えなければなりません。
逆に、専門用語があれば「〇〇さんのお母さんに、レスパイトケアの導入が必要ではないでしょうか」で済みます。
つまり、共通の理解があれば簡潔に話が進められるから、専門用語を使うわけです。
⇒【関連記事】『生活介護事業所の「ケース会議」と「事例検討会」の違いと見分け方』
専門用語をわかりやすく説明するコツ
専門用語について理解が進んできたところで、別の視点から皆さんに質問です。さて、アナタは次のどちらの人の話を、わかりやすいと感じますか?
個人差はあると思いますが、理解に合わせて言葉を選んでもらったほうが、わかりやすいと感じるのではないでしょうか。
つまり、わかりやすく言い換えて説明する時のポイントは、
「相手の理解度を知る」「自分の使える言葉を増やす」
この2つです。
相手の理解度を知れば自分の言葉を選びやすくなり、使える言葉が増えれば言い換えの幅が広がります。
その方法について、私が実践している3つのポイントに沿ってご説明します。
専門用語をわかりやすく言い換えるための3つのコツ
①は、相手に合わせて自分の言葉を選ぶのに役立ちます。
私が使っているのは、「難しい言葉ですが、○○は知っていますか?」
という前置き言葉です。
この前置き言葉、
・難しい言葉だけど知っていたから自分の自信になる
・難しい言葉だから知らなくても問題ない
相手にとってどちらに転んでもマイナスではない状況を作り出せるので、かなり優秀です。
乱発するとただのしつこい人になってしまいますが、相手がどこまでわかっているかを確認する事が出来れば、
「わかっているのに説明することになる」
「わからないのに省略してしまう」
といった状況を大幅に軽減する事が出来ます。
ご利用者さん本人やご家族さんはもちろん、新人職員さんの研修や介護実習生の受け入れを担当した際などにも幅広く使えます。
②は、2ステップで練習します。
いきなり専門用語をわかりやすく言い換えようとせず、2つのステップで練習しています。遠回りな方法のようで、結果的にこれが一番近道です。
最初は普段使っている言葉を、より簡単な言葉で言い換える練習です。
私の職場には、「終わりです」が伝わらないけれど、「おしまいです」が伝わるご利用者さんがいます。相手に合わせた言葉を使うことをいかに大切にしているか、わかっていただけるでしょうか。
慣れてきたら、次のステップです。
難しくなってもいいから他の言葉に置き換えていきます。「使える言葉を増やすこと」が目的なので、100%同じ意味でなくても構いません。
これだけでも20種類以上の言葉の使い分けが身につくことになります。少しずつ、自分のペースでやっていきましょう。
③は、この3つの中で最も大切です。
ここまで来たらあと1歩です。専門用語を思い切りかみ砕いて、誤解されるくらい短くまとめる方法をご紹介します。
これも少し遠回りに感じてしまうかもしれませんが、「一度書いて、そこから削っていく」のが結果的に早いと思います。
「ADL」という言葉を例にします。
ここから削っていきます。全てのパターンに当てはまるわけではありませんが、具体例などは思い切って削ることが多いです。
自分の中で難しいと感じた言葉は、②を応用して置き換えていきます。
多少の誤解や説明不足は承知で、これくらいかみ砕いて説明しています。
「説明しすぎない」というスキル
私がなぜこんなにも、短くまとめることにこだわるのか。
それは、「相手はわからない状態からスタートしている」からに他なりません。
何もわからない状態から、いきなり多くの情報を伝えられたら戸惑ってしまいませんか? そして、その戸惑いは「理解しよう」という気持ちにブレーキをかけてしまいます。
もともとわからない状態だったわけですから、説明したことが1つでもわかればそれは大きなステップアップだと考えています。
かみ砕きっぱなしが気になる場合は、「少し専門的な言葉が増えますが、もっと詳しくお話しできます」と付け加え、必要であれば詳しく説明するという2段構えの方法をとることをおススメします。
削った逆の順序で説明を増やしていくと良いでしょう。
まとめ
今回は「専門用語をわかりやすく言い換える」をテーマに、専門用語の必要性や具体的な練習方法などを書いてきました。
- 専門用語は必要だけど、伝わらない時はとことん伝わらない
- 前置き言葉を活用して、相手の理解度を知り、前提を揃える
- 相手の立場に立って、思いっきりかみ砕くことも大切
最後に伝えたいのは、「説明すること」とは、「自分自身が理解できているかを確認すること」でもあるということです。
サービスを利用しているご本人さんに、「自分にとってわかりやすい言葉で説明してくれる人」と感じてもらえる人になるために、まずは身近な言葉をいくつかのバリエーションで言い換えるところから始めてみませんか?
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