化膿性膝関節炎の治療中のたかさん。約2週間ほど膝にチューブを取り付けていましたが、いよいよチューブを抜くときがやってきました。
主治医の先生が、病室で処置をしてくれたので、私も立ち会いました。
自分の事ではないとわかっていても緊張してしまい、自分の体じゃないと思っていても膝が痛くなる…でも、見てしまう…。っていうか、抜く瞬間小さな声で「痛っ」って言っちゃったし。
そんな私と違い、たかさんはチューブを抜く瞬間、少し体をこわばらせる様子が見られたものの、終始落ち着いていました。
その目は、
「へいブラザー、お前がオロオロしてどうするんだ」
と語ってくれているようでした。
(そんな事言われても、怖いものは怖いんですよ〜)
処置したその日から、セガワ先生が簡単なリハビリに来てくれるようになりました。足の簡単な曲げ伸ばしなど、歩行訓練に向けた準備が本格的に始まった瞬間です。
当時の介護記録にも、セガワ先生の言葉として、「リハビリ的には材料は揃っています。後は主治医のゴーサイン待ちです。」とメモしてありました。
そしてついに、たかさんがリハビリを再開する日がやってきました。処置前と変わらず、午後一番で迎えに来てくれたセガワ先生と共に、いざ! リハビリ室へ!
移動中のたかさんは、少し前まで膝にチューブを入れていたとは思えないほど、穏やかな表情でした。付き添うセガワ先生も、たかさんの落ち着きぶりを見て笑顔を浮かべています。
そんな中、異様に緊張している人物が1人。はい、私です。
「たかさん、ちゃんと歩けるかな。」
「痛くないだろうか。」
「リハビリのやり方は覚えてくれているでしょうか。」
いや、一回落ち着け私…。ほら、リハビリ室着いたから。
セガワ先生は、たかさんの傷の具合を確認し、
「今日は歩行器ではなく、平行棒を使って歩いてみましょう」
と提案されました。
2週間以上寝たきりで、歩く意欲を失ってしまってもおかしくないはずのたかさんでしたが、平行棒を持って立ち上がり、そこから手を離して数歩進むことができました。
歩けた!
たかさんは歩くことを忘れていなかった!
「今日はここで終わりにしますが、しっかり歩けています。」
セガワ先生の言葉を聴きながら、私の全身を感動が駆け巡っていました。その感動たるや、夕方お母さんとバトンタッチする時に報告しながら、思わず泣いてしまうほどでした。
すいません、お母さん。たかさんのことになると、感情移入しすぎて涙腺のパッキンが壊れちゃうんです。
少し落ち着くために、リハビリ再開前後のたかさんとのやり取りについてもお話しましょう。
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