今日は、たかさんがリハビリを再開する1週間ほど前まで時間を巻き戻します。
たかさんの病室には、入り口と反対側に大きな窓があります。ある日、窓の上の天井部分から、雨漏りしてしまう事態が発生しました。
様子を見に来てくれた業者さんから、
「これからしばらく、窓の近くには物を置かないでください」
と言われました。
「わかりました。」
とお返事したのは良いものの、実はこれが重大な、重大な問題でした。
ここ重要なので繰り返しますね。
「これからしばらく、窓の近くには物を置かないでください」
物の置き場所に対して、とても強い思い入れのあるたかさん。
実は、窓とカーテンの隙間に「たかさんにとって、見えてしまうと気になって仕方がないもの」が大量に収納してあったんです。
パジャマ、尿取りパッド、タオル、箱ティッシュの予備…。たかさんの特性上、一度「気になってしまったもの」を「気にしないようにする」のは困難を極めます。
「窓の近くに物をおいてはいけない」
という業者さんとの約束を守りつつ、
「見えると気になって仕方がない」
というたかさんの気持ちにどう寄り添うか。
お母さんとも相談し、雨漏りの被害を受けず、たかさんの視界に入らない場所に全てのものを移動させることにしました。
膝にチューブを取り付けたたかさんが、不安になって周囲の制止を振り切って動いてしまう事のないよう、リスクをできるだけ回避しようとしていた頃の出来事です。
お母さんと相談した結果、「テレビ台」と「ご家族さんが寝るベッド」の間の床に段ボールを敷いて、その上に仮置きすることにしました。
①たかさんに気づかれないように移動させること。
②「そこに気になるものがある」と悟られないこと。
問題はこの2つです。これらが全てクリアできて初めて、たかさんが安心して過ごせる環境が整います。
これが『ぴーすてらす』での業務であれば、多少の試行錯誤も可能かもしれません。ですが、ここは陽向総合病院の病室、そして相手はたかさん。リカバリーの難しさなどを考えると、1発で成功させたいというのが本音です。
①については、ご家族さんの協力のもと、たかさんが寝ている間など利用して、比較的スムーズに移動させることができました。
より多くの配慮が必要だったのが②です。
例えば、タオル1枚取るとしても、露骨にしゃがんで取るわけには行きません。そこにタオルがあるとわかってしまえば、たかさんが「気になって仕方ないモード」になってしまうかもしれません。
とはいえ、そこはプロの忍者…もとい、生活支援員。たかさんの意識がDVDに向かっている時や、回診のタイミングなどを利用して、必要なものを用意していました。
そんな努力が功を奏したのか、修理が完了するまでの間、たかさんが大きく調子を崩してしまうことはありませんでした。仮置きしたものをもとに戻すのも、ご家族さんの協力のお陰でスムーズに行うことができました。
ご家族さんとの連携の大切さを改めて実感した時期です。そして、たかさんへの工夫と配慮は物の置き場所だけにとどまりません。
食事の様子についてもお話していきましょう。
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