エレベーターのボタンやお酒の缶など、身近なところで使われている点字。「何と書いてあるか」はわからないけれど、見たことがあるという人は多いはず。今回は、生活介護事業所の職員である私が、点字の魅力について語ります。
- 点字の仕組みは何となく知っているけど、読み方は知らない
- 知りたいとは思うけど、今まで学ぶきっかけがなかった
- 「点字の魅力」と言われても、いまいちピンとこない
私自身が、視覚に障害のあるご利用者さんのケアを担当した経験をもとに、点字の仕組みや決まり事など、「点字のココが面白い」というポイントをわかりやすくご紹介します。
この記事は
・点字の魅力を知りたい人
・点字が必要な人を担当することになった生活支援員さん
・点字を学ぶきっかけがほしい職員さん
におすすめです。
私が点字と出会ったきっかけ
私に点字を教えてくれたのは、私が働いている施設のご利用者さん、マユコさん(仮名)です。
目が全く見えず、それに加えて体の左半分に麻痺があります。趣味は音楽鑑賞、ポップミュージックをこよなく愛する、笑顔が素敵な女性です。
足音で人を見分けるのが得意で、何も言わずに近くを歩いていたら名指しで呼ばれたことがあります。(私の足音はすごく特徴的らしいです)
ある時、私はマユコさんの支援を担当することになりました。担当になる以前から、彼女とは言葉でのやり取りをしていましたが、施設からの連絡などはすべて保護者さんを通じていました。
意思疎通に不便を感じていたわけではありません。ですが、彼女と「文字を使ったコミュニケーションをしたい!」と思った私は、点字を覚えるべく一念発起! マユコさんに弟子入り志願しました。
マユコさんから教わった点字の仕組みが、普段使っている話し言葉の原理とは全く別物で、とても興味深かったのを覚えています。
例えるなら、全く違う国の言語を学ぶような感覚でした。点字の世界を知ることができて本当に良かったです。
点字に関するマメ知識
点字の魅力をお話する前に、まずは点字に関するマメ知識をご紹介します。
「点字じゃない文字」を何というの?
点字に対して、紙に書いた文字を何というのか、これは私もギモンでした。
点字と漢字?
点字と書き文字?
点字とかな文字?
正解は「墨字(すみじ)」です。印刷されている文字や筆記用具で書いた文字のことを言います。基本的に「目で読む文字」を指すと考えてもらって大丈夫です。
点字は誰が作ったの?
点字の発祥はフランスで、教師だったルイ・ブライユが視覚障害者用の文字として考案しました。この点字は、1854年にフランスで正式採用され、現在では世界中で使われています。
現在日本で使われている点字は、「日本点字の父」石川倉次(いしかわ くらじ)が考案し、1890年に正式採用されました。
参考:wikipedia ルイ・ブライユ 更新 2023年7月19日 (水) 22:18
参考:wikipedia 石川倉次 最終更新 2023年7月29日 (土) 01:46
点字の記念日がある
石川倉次の考案した点字が正式採用された日にちなみ、11月1日は「点字の日(点字制定記念日)」として制定されました。
なお、ルイ・ブライユの誕生日にちなんで、1月4日は「世界点字デー」です。
参考:wikipedia ルイ・ブライユ 更新 2023年7月19日 (水) 22:18
参考:wikipedia 点字の日 最終更新 2021年5月21日 (金) 12:51
点字の魅力5つ
ここからは、私自身が感じたことや、師匠であるマユコさんから教えてもらったことなど、点字の魅力を余すところなくお伝えします。
図などで示すともっとわかりやすいですが、音声読み上げソフトを使うことを意識して、できるだけ文字で書いていきます。
読むためのルールがハッキリしている
点字は読むためのルールがハッキリしています。言い換えると、「書く時のルールがしっかりしている」ということです。
- 左から右に読む
- すべて横書き
- 大きさやフォントに種類がない
これらはすべて、「触れるところだけを認識できる」という点字の特徴に基づくものです。
墨字を読む場合であれば、どのような文章の構成なのかを視覚的にとらえることができますが、点字の書き方がバラバラだと、どこから読んでよいか混乱してしまいます。
「ひらがな・カタカナ」の区別がない
点字は6つの点の組み合わせから成り立っています。ひらがな・カタカナ同様、その文字の音を表す「表音文字(ひょうおんもじ)」に分類されます。
「ばなな」も「バナナ」も声に出してみると同じ音なので、「ひらがな・カナカナ」の区別がないことが点字の魅力です。
また「聞こえたとおりに表記する」という特徴があります。
お母さん⇒「おかーさん」
今日は 学校へ 行く⇒「きょーわ がっこーえ いく」
寝坊して大慌て ⇒「ねぼー して おーあわて」
など、独自のルールがあるのも魅力だと感じています。
しくみはローマ字に似ている
点字は6つの点でできていて、それぞれに番号があります。
1 4
2 5
3 6
それぞれ、1点2点と読みます。
ローマ字は、「母音 + 子音」で構成されています。それと同様に、点字も「1、2、4点で母音」
「3、5、6点で子音」を表しています。
例えば、点字で「か」を表したいときは
1 → A
6 → K
を表すので、
① 4
2 5
3 ⑥
これで「か」になります。
※「や・ゆ・よ・わ・を」は例外で、別の仕組みがあります
濁音、半濁音、拗音の仕組みが独特
点字には濁音、半濁音、拗音の仕組みについて、ローマ字と決定的に違う部分があるのも魅力です
ローマ字では、「が」は 「G A」と表します。
点字の世界では、Kの子音はあってもGの子音がありません。
その代わりに、「次の文字を濁点を付けて読んでください」という意味の記号が出てきます。
点字には右から左に読むルールがあるので、「次の文字を濁点を付けて読んでください」という記号の次に出てきた文字が「か」なら「が」と読みます。
6つの点のまとまりを1ブロックとするなら、濁音(が・だ)、半濁音(ぱ)、拗音(きゃ・にゃ)は合計2ブロックを使って表すことになります。
この仕組みが面白いと感じて、点字の魅力に引き込まれていったと言っても過言ではありません。
スペースが重要
点字は、文節ごとにスペースで区切る「分かち書き」というルールがあります。
「点字に関する記事をたくさん書きました」
という文章を点字にすると、
「点字に 関する 記事を たくさん 書きました」
というふうに、スペースで区切って書くことになります。
また、折り返して書くと読みづらくなるので、改行を多く取って読みやすくする工夫もします。
まとめ
今回は、「点字の魅力」というテーマで、点字のマメ知識や私が感じる5つの魅力について書いてきました。
- 「点字ではない文字」を「墨字(すみじ)」という。
- 点字の発祥はフランス。日本では1890年に正式採用された。
- 仕組みはローマ字に似ているけど、決定的な違いもある。
私に点字教えてくれたマユコさんと話をしていた時、「例えば、施設で配られるプリントを点訳する時に、情報をすべて点訳すると、かえって読みにくくなってしまう」という言葉がとても印象に残っています。
「読みやすい」の感じ方は人それぞれです。墨字で書く時に、文字の大きさや、読みにくそうな漢字にはルビを振るなどの工夫をする事があると思います。
点字も同じで、内容的にも視覚的にも「読み手に思いを馳せながら書いていく」のが大切です。時には物の見方を変え、柔軟な視点で点字の世界の魅力を楽しんでみてください。
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