障害者福祉の現場は思った以上に会議が多いです。困りごとを抱えている人を支援するためには欠かせないものであり、それだけ情報共有が大切ということなんですが、会議の種類の多いことに驚かされます。
しかも、名前が「ケース会議」だったり、「事例検討会」だったり、名称が違えば全て違う種類の会議なの? という疑問が出るのも頷けます。
・今まで会議の種類について考えたことがなかった
・出席した会議が自分の思っていたものではなかった
・ケース会議を主催することになって困っている
そんなアナタのために、この記事では生活支援員として働く私が、現場歴15年の経験を活かして、ケース会議と事例検討会の違いをわかりやすく解説します。
この記事は
・ケース会議と事例検討会の違いを知りたい人
・チームアプローチで生活介護事業所に関わることになった他職種の人
・新人の生活支援員さん
にオススメです。
大切なのは「名称」ではなく「目的」
私の仕事柄、生活介護事業所が関わるケース会議を想定して記事を書いています。看護や教育の現場とは少し違うかもしれないという点はご了承ください。
というのも、状況によっては「ケース会議」と「事例検討会」が同じものを指していたり、「ケース検討会」や「ケースカンファレンス」という名称だったり、職種や地域によって違いがあると感じているからです。
目的は2つしかない
まずは、会議の名称ではなく目的をはっきりさせていきます。これによって、名称のズレが会議の目的のズレにつながる、という事態を軽減させることができます。
この記事では、「当事者さんの困りごとを解決する会議」をケース会議、「参加者のスキルアップを目指す会議」を事例検討会と呼びます。
大切なのは会議の名称ではなく、何のための会議かという点です。ここさえおさえておけば、「ケース会議」や「ケースカンファレンス」など、呼び方が変わっても比較的容易に対応できます。
名称だけでなく、何のための会議なのかを説明できると、わかりやすさがぐっとアップしますよ。
⇒【関連記事】『めざせ!説明上手 〜専門用語をわかりやすく言い換えるテクニック〜』
ケース会議ですること
ケース会議とは、何らかの支援を必要としている人のために、より良い支援ができるようにするための会議です。関係者がチームとなって情報を共有し、必要な支援内容や役割を決定していきます。
当事者さんが求めている支援を、どうやって届けていくかを決定し、実行する道筋をつけることが目的です。
そして、目的と同じくらい大切なのが、ケース会議の目指すもの(着地点)です。
この両方を決めることが、ケース会議の目指すものです。ケース会議に参加したことはあるけど、自分の思っている会議と違ったと感じてしまうのは、このどちらかがはっきりと共有できていなかったからかもしれません。
また、ケース会議は1回やって終わりというものではありません。支援は中〜長期的に継続されていくからです。その人の長期支援目標(ゴール)をめざし、スモールステップを意識した短期支援目標の設定なども必要です。
ケース会議のメリット
ケース会議を行う最大のメリットは、チームで1つの事例に関われることです。
担当者ひとりでは解決が難しい事例でも、チームで関わることで、支援の幅が広がり、当事者さんの困りごとを改善できる可能性が高まります。
チームメンバーが、それぞれの視点から意見を出し合い、効果的な対応策を発見し、解決に向けて行動することがとても大切です。
またケース会議は「いつ開催するか」や「誰が開催することができるか」など、時期や主催者に関してルールはありません。
状況に合わせて方針を変更したり、新たな支援方法を導入を検討するなど、必要に応じた柔軟できめ細やかな対応が取りやすい体制づくりを進めることができるのもメリットの1つと言えるでしょう。
さらに、ケース会議には、多職種の専門家が対等な立場で連携するという大きな特徴があります。
ケース会議のデメリット?
ここまで、ケース会議のメリットをたくさん挙げてきました。では、デメリットはないのでしょうか?
残念ながら、ケース会議は万能ではありません。
・関係者が多ければ多いほど、スケジュールの調整が難しい
・多職種が連携するため、専門知識や専門用語のすり合わせに時間がかかる場合がある
・継続的に開催する中で、担当者が変わることがあり、引き継ぎに手間取ってしまうことがある
といった点が、経験上どうしてもデメリットだと感じてしまう部分です。特に、前任の担当者との引き継ぎが不十分なまま、担当を交代せざるを得ず、足並みを揃えるのに苦労した経験が未だに印象に残っています。
ですが、そのデメリットを補って余りあるメリットが、ケース会議にはあります。会議を有意義なものにするには、より効率的な運営が必要になりますので、後述するケース会議の準備についてもぜひ読んでみてください。
事例検討会
先程、ケース会議と事例検討会は、会議の目的(目指すものが)が違うと書きました。この章ではその他にも違うところや同じところをまとめていきます。
同じところ
当事者さんの事例をピックアップする
違うところ
ケース会議 ⇒ 事例に関連する人が参加する
事例検討会 ⇒ 事例に直接関連しない人も参加する
ケース会議との最大の違いは、参加者のスキルアップを目指す会議である、という点です。
また、ケース会議は、ピックアップする事例に関連する人が参加するため、比較的少人数で実施されます。 それに対し事例検討会は、やり方を工夫すれば大人数での実施が可能という特徴があります。
もし、自分が参加する会議が「ケース会議のタイプ」なのか「事例検討会のタイプ」なのか判断できない場合は、「参加者全員がそのケースの関係者として呼ばれたかどうか」で判断してください。
事例検討会ですること
事例検討会の目的は、自身のスキルアップです。検討する事例を提出した人の悩みを、参加者全員で共有し、「自分ならどうするか」という視点で問題点を整理していきます。
そして、参加者との意見交換の中で、解決のための糸口を見つけ、自分自身のサービスの質の向上を目指します。
事例検討会の参加人数などによって形式は様々です。大人数が参加する研修会などでは、参加者を数名単位のグループに分ける場合もあります。検討会では、ただ話し合いをするのではなく、テーマを決めて話し合うことで、「自分ならどうするか」という視点で考えやすくなります。
事前の準備
いざ、ケース会議や事例検討会に参加するとなったら、慣れないうちはどうしても緊張していまいますよね。この章では、私が事前準備として行っていることを2つご紹介します。
事前に事項書が配布される場合があるので、その時におすすめしたい方法です。
①事例は事前に読み込んでおく
⇒何を当たり前なことを、と思われるかもしれませんが、とても大事です。会議中に焦らなくてすむのはもちろん、会議を主催した人の視点や困りごとを事前に知ることができます。私は大事だと思う部分に赤ペンで下線を引くようにしています。
②意見は事前に用意しておく
⇒私自身のセンスの問題なのかもしれませんが、会議の場でパッとひらめいたことが、いいアイデアに繋がった試しがありません。むしろ、何もひらめかないことが多いです。
資料を参考に、「ここではこれを言おう」というメモを作成するのがオススメです。
まとめ
今回は「生活介護事業所の」をテーマに、ケース会議と事例検討会の違いについて紹介してきました。
- 会議の目的は大きく分けて2つしかない
- ケース会議は「全体の支援方針」と「各自の役割」を決める
- 事例検討会は「自分ならどうするか」という意見を出し合う
最後に伝えたいのは、私が感じているケース会議のデメリットは、逆に考えればそのままメリットになるということです。
「スケジュールの調整ができれば、多くの関係者が参加することができる」
「専門知識や用語のすり合わせを工夫することで、多職種がスムーズに連携できる」
「引き継ぎをスムーズに行うことができれば、担当者の変更にも対応しやすい」
会議の目的を理解するのと同じくらい、とらえる枠組みを変えてみることも大切です。
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