皆さんは、”リフレーミング”という言葉、耳にしたことありますか? よく似た言葉にポジティブシンキングがあります。
「リフレーミング? いまいちピンとこない。」
「ポジティブシンキングと同じだと思っていたけど、違うの?」
「障害者福祉の世界で働くために必要な考え方なの?」
という疑問や悩みをお持ちの方もいらっしゃるはず。この記事では、リフレーミングとポジティブシンキングの違いを、私の実体験をもとにして解説します。
リフレーミングの考え方を理解して仕事に活かすことができれば、現場の職員さん同士はもちろん、ご利用者さん本人やご家族さんへの声かけにも活かせる『アナタの強み』になります。ワンランク上の気配りができる支援員になれるチャンスです!
この記事は
・リフレーミングとポジティブシンキングの違いを知りたい人
・障害者福祉の現場で働く職員さん
・福祉の現場で活かせる具体例が欲しい生活支援員さん
にオススメです。
リフレーミングとは
リフレーミングは、福祉に関する専門用語というわけではなく、心理学の考え方です。福祉の世界だけでなく、ビジネスや教育の現場でも注目されています。
ものすごく簡単に言うと、とらえる枠組みを変えてみるということです。
私の場合は、もう少し直感的な表現で、「そういう考え方もできるよね」と思えるようなものの見方、というふうに説明することもあります。
とらえる枠組みが変わることで、物事を前向きにとらえ直すことができたり、行き詰まった状況を打破するためのアイデアが浮かぶきっかけになったりします。
私自身、生活支援員をしていて「良くも悪くも自分の常識が通用しない」ことが大変だなと感じるので、リフレーミングの考え方は大切だなと実感しています。
⇒【関連記事】『「生活介護事業所の生活支援員」の仕事はココが大変』
これがリフレーミング
「8月31日の朝、明日から学校が始まる」
という状況をイメージしてみてください。
この状況を異なる2つの枠組みでとらえてみましょう。
どちらの見方をしても、「夏休みは残り1日」という状況に変わりはありませんが、あと1日しかないという枠組みでとらえるか、あと1日あるという枠組みでとらえるかで、受け取り方が随分と変わると思います。
これがとらえる枠組みを変える = リフレーミングです。
まずは、「とらえ方によって受け取り方が変わる」という点を押さえて、次にいきましょう。
リフレーミングとポジティブシンキングの違い
ある出来事の見方を変えることで、前向きな方向に考えることができるようになる、という意味ではリフレーミングとポジティブシンキングには似ているところがある、と言えます。
2つの違いをまとめると、こんな感じです。
・リフレーミング ⇒ ある出来事のとらえ方を変えることで、そういう見方もできると考える
・ポジティブシンキング ⇒ ある出来事そのものを、起こってよかったことに変換する
違いをわかりやすくするために、私が実際にやらかしてしまった事例を見てください。
これを、リフレーミングとポジティブシンキング、両方の考え方でとらえ直してみます。
ポジティブシンキング
「むしろオシャレだよ!」
「SNSに書き込むネタができた〜」
⇒靴下の履き間違い、という出来事そのものを「起こってよかったこと」に変換している。
リフレーミング
「洗濯物のたたみ方やしまい方を見直すチャンスかも知れない」
「もっと大きな失敗をする前に、朝の準備にかける時間を見直してみよう」
⇒履き間違って恥ずかしかったではなく、履き間違ったことをどう活かせるかという枠組みでとらえ直している。
「前向きな方向に考える」という結果は同じですが、考え方のプロセスは大きく違うと感じてもらえたでしょうか。
ポジティブではないリフレーミング!?
介護の現場では、ポジティブではない方向にリフレーミングすることがあります。次の事例を見てください。
この状態、もちろん順調に進んでいるわけですが、見方を変えれば「距離が伸びない日があった場合、ショックを受けて落ち込んでしまう恐れがある」と考えることもできます。
ご利用者さんの特性などに配慮し、万が一に備えたケアを準備するのも、福祉施設職員として必要なスキルの1つだと考えています。リフレーミングの考え方は、福祉の仕事に役に立つことがたくさんあります。
リフレーミングの注意点
時には相手の状況や考え方に対して、リフレーミングをすることもあるでしょう。その時に注意したいのは、「相手にリフレーミングの考え方を押し付けない」この一言に尽きます。
あくまでも「こんな見方もできるのではないか」という考え方を伝えるだけで、最終的にその出来事をどのようにとらえるかは、相手の意思を尊重します。
とらえる枠組みを変えることで、新しい考え方の発見につながるリフレーミング。ここからは、私が職場で悩みを相談されたときなどに活用している考え方をご紹介します。
現場で使えるリフレーミング10選!
「仕事を覚えるのが遅い」⇒『丁寧に仕事を覚えようとしている』
「失敗ばかりしてしまう」⇒『誰よりも痛みがわかる優しい人になれる可能性がある』
「介助がなければ歩くことができない」⇒『介助があれば歩くことができる』
「意志が弱い」⇒『人の意見を大切にできるという優しい一面がある』
「落ち着きがない」⇒『いつでも動ける準備ができている』
「仕事が忙しい」⇒『自分に何が必要か、見直すきっかけになる』
「雨の日は外に行けない」⇒『室内でも楽しめる遊びを開発するチャンス』
「集中力が続かない」⇒『短い時間で作業を終わらせる達人になれる可能性がある』
「やってみたけどうまくいかなかった」⇒『挑戦しようと思えたことが何より素晴らしい』
「こだわりが強く変化に弱い」⇒『マイルールがしっかりしていて、繰り返しに強い』
「仕事が大変」をリフレーミング
ストレスフルな障害者福祉の世界、「今の仕事が向いていないかもしれない」「仕事が大変」と感じてしまうこともありますよね。
とらえ方を変えれば、「向いている仕事を探すきっかけがほしい」「仕事の大変さを誰かと共感したい」という見方もできます。こちらの記事も読んで、喜びも辛さもシェアしちゃいましょう!
⇒【関連記事】『「中の人」が語る:生活介護事業所の施設見学でチェックするべきポイント5つ』
まとめ
今回は「リフレーミングとポジティブシンキングの違い」をテーマに、リフレーミングの具体例などを紹介してきました。
- リフレーミングとは、「とらえる枠組みを変えてみる」こと
- リフレーミングとポジティブシンキングは、考え方のプロセスが違う
- 「相手に自分の考え方を押し付けない」姿勢が大切
最後に伝えたいのは、リフレーミングの考え方は万能ではないということです。例えば、手が回らないほど人手不足な現状を、「物事の優先順位を見直すチャンス」ととらえたとしても、人手不足な現状が変わるわけではありません。
もちろん、相手の良いところを発見したり、新しいアイデアが必要な会議など、リフレーミングが効果的な場面がたくさんあります。相手を尊重する気持ちを大切にして、アナタらしい考え方で物事をとらえてみてください。
コメント