生活支援員の皆さん、ご利用者さんと一緒に神社やお寺に行ったことはありますか? 施設のみんなで近所の神社に初詣に行ったり、有名なお寺に観光に行ったりできたら楽しみが広がります。ですが、
「砂利道の移動に不安があって、外出したいけどできない」
そんな悩みを持っている人もいるのではないでしょうか。参道の玉砂利は、風情がありますが車いすの走行に適しているとは言い難いところがあります。
そこで今回は、現場歴15年の経験を活かし、砂利道を移動する時の車いすの押し方をご紹介します。すべてのケースに対応できる万能の方法ではありませんが、ぜひ最後まで読んでください。
この記事は、
・砂利道で車いすを押す方法を知りたい人
・神社やお寺にお参りに行きたい当事者さん
・外出活動担当の生活支援員さん
におすすめです。
なぜ砂利道が苦手なのか
車いすと砂利道の相性は良くありません。実際に砂利道で車椅子を押してみるとよく分かるんですが、砂利に車いすの前輪(キャスター)が取られてしまい、上手く操作することが出来ません。
また、車いすのタイヤの幅が狭いため、砂利が厚いところだと沈みやすくなります。特に走行中、前輪が沈んでしまうと、車いすが大きく前傾してしまうことになるので非常に危険です。
石畳や踏切なども、前輪が引っかかってしまう可能性があるため注意が必要な箇所です。
悪路に対応した車いすもある
既成の車いすに、オプションパーツとして取り付ける「快適AQURO(かいてきアクーロ)」や、オフロード車いす「ジャリスター」など、砂利道や雪道、デコボコした道など、悪路での走行に対応した車いすやパーツがあります。
これらを用意するのも1つの方法ですが、今回は「悪路に対応していないベーシックなタイプの車いすの介助」という状況を想定した場合の押し方をご紹介します。
ポイントは前輪を浮かせる
砂利道などの悪路を走行する場合は、ティッピングレバーを踏み込んで、前輪を持ち上げた状態で進みます。グリップを下に押し下げながら、ゆっくりと前に押し出すイメージです。
後輪が沈み込んでしまうほどの悪路でない場合は、この方法で比較的安定して走行することが可能です。
注意点
前輪を挙げて走行する時の注意点は以下の4つです。支援者の立場で気をつけることは(支)、ご利用者さんの立場で気をつけることは(利)と書きますので参考にしてください
(支)いつもよりも力が必要になる
進行方向に向かって押す力にプラスして、前輪を浮かせた状態を維持するために、常に下に向かって力を加える必要があります。自分の力を過信せず、こまめに休憩を取りながら介助してください。
外出のプログラムとして、神社やお寺にお参りいにく場合は、余裕を持った時間設定をしておくことが大切です。
(支)声掛けが何よりも大切
もし可能であれば、支援者同士2人1組になって、前輪を浮かせた状態を体験してみてください。感じ方には個人差がありますが、思った以上に後ろに傾く感じがします。
ご利用者さんにとっては、普段と違う乗り心地になるため、不安を感じてしまう人もいるでしょう。普段以上に、意思疎通を図ることを大切にしてください。
- 前輪を浮かせる時
- 動き始め
- 止まる時
- 前輪を下ろす時
など、いつもよりもワンテンポ早く声をかけることを意識するのがポイントです。
(利)背もたれに背を預ける
車いすを利用するご利用者さんにとっても、いくつか注意してほしいことがあります。
前輪を浮かせるため、背もたれにしっかりと背中を預けてください。もし、声掛けが必要な場合は、支援者が適宜サポートをお願いします。
(利)アームサポート(肘置き)を持つ
前輪を浮かせる都合で、どうしてもバランスが悪くなります。平坦な砂利道だと思っていても、急に段差がある場合もありますので、肘置きの部分を持つことでより安心して利用することができます。
ベルトなどを利用している場合は、正しく装着されているかをチェックするようにしてください。
どちらの場合でも、支援者との意思疎通が大切です。
前輪を浮かせるのが難しい場合は
支援者とご利用者さんの体格差が大きく、どうしても前輪を浮かせて走行するのが難しい場合は、坂道を降りる要領で後ろ向きに進むことで、前輪が引っかかってしまう事をある程度防ぐことが可能です。
ただし、この方法では前方の確認がしにくくなってしまいます。可能であれば体格差をカバーできる支援者と交代するほうが、お互いにとって安心ですが、いざという時の手段として、覚えておくと良いですよ。
場所によっては貸出サービスも
私は、伊勢神宮が好きでよくお参りに行きます。伊勢神宮には、数に限りがあるため確実に利用できるわけではありませんが、砂利道の走行がしやすい車いすの貸出サービスがあります。
他にも、事前に「バリアフリー対応の神社やお寺」を探すといった方法もあります。様々な方法を組み合わせて、ご利用者さんと一緒に外出を楽しみましょう。
まとめ
今回は、砂利道の押し方をマスターして、神社・お寺に行こう!というテーマで、前輪を持ち上げて走行する方法をご案内しました。
- 前輪が沈み込んでしまうと、前のめりに転倒してしまうリスクがある
- 肘置きを握ってもらい、背中をしっかり預けてもらう
- 事前の情報収集で、車いすの貸出サービスなどを確認してみよう
前輪を浮かせての走行は、操作にある程度の技術が必要で、支援者の腕に負担がかかりやすい方法です。決して無理をせず、少しずつ休憩しながら、神社やお寺のお参りを楽しんでみてください。
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