寒い季節、手袋は外出に欠かせないアイテムの1つですよね。実は、体の片側に麻痺がある人にとっては、手袋をはめるのがとても大変に感じることがあるんです。特に健側(麻痺のないほう)に自分一人で手袋をはめるのは至難の業です。
- 外出先で着け外しができたらいいのに
- できるだけお金をかけない方法を試したい
- 仕組みを用意するところから自分一人でやりたい
今回は、私が実際に経験したケースをもとに、電動車いすを利用している片麻痺の人が、「準備の段階から片手でできる」方法をご紹介します。しかも、外出先での着け外しが可能で、100円ショップの材料1つでできる、まさに夢のようなアイデアです。
この記事は、
・片手で手袋をはめる方法を探している人
・身近な人にアイデアを提供してあげたい人
・福祉施設の職員さん
におすすめです。
電動車いすとは?
バッテリーで動く車いすのことです。動かすためのレバーが付いていて、手や足などで自分が動きたい方向に傾けて操作します。
電動車いすを利用している片麻痺の人が、片手で手袋をはめる時に気をつけたいポイントは次の3つです。
ポイント① 操作性
レバーを手で操作するタイプの電動車いすの場合、レバーを傾ける力の加減が難しいです。
また、荷物の出し入れなど、レバーの操作以外の動作も片手で行うことになります。
寒さを凌ぐだけなら、鍋つかみのようなものを使えばよいのかもしれません。ですが、車いすの操作性を落とさないようにするためには、5本指の手袋を着脱できるのが好ましいです。
ポイント② 外出先でのはめ直し
例えば、「家で手袋をはめることはできる」けれど、「外出先で外してしまうとはめ直しができない」というのは少し不便かもしれません。
途中でトイレに行くこともあるでしょうし、目的地が室内であれば手袋は外しておくことが多いのではないでしょうか。
行きは寒くないけど帰りが寒い、という事態を軽減するという意味でも、「着脱が自分のタイミングでできる」仕組みがあると便利です。
ポイント③ 準備する段階から「片手でできる」
仮に、「着脱が自分のタイミングでできる」仕組みがあったとしても、それを準備するために人手が必要となると、準備のためのハードルが上がってしまいます。
仕組みを必要としている人が、一人暮らしをしているケースも考えられます。準備する段階から、片手だけで作業が完結できるアイデアがあれば、実行しやすくなるはずです。
用意するもの
準備するのは「ファスナーテープ」です。100円ショップなどで購入可能です。
片手で作業を完結させたい場合、必ず「接着タイプ(裏がシールになっているもの)」を用意して下さい。大きさは特に指定はありませんが、ある程度幅があったほうが接着力が強いです。
仕組み作り
電動車いすの健側に「ファスナーテープのチクチクした面」を貼り付けます。手指の可動域などにもよりますが、接着タイプであれば、片手でシールを剥がすことが可能です。
衣服の巻き込み防止プレートの部分や、幅があるタイプ肘置きなど、自分が操作しやすく貼りやすい部分に貼り付けます。(写真は手動式の車いすです)
下の写真のように、フレームしかないタイプの場合は、コントローラーの横の面を使うのもおすすめです。フレームに貼れるようであれば問題ありません。
実際にやってみる
今回は見やすさを重視して、車いすに見立てた腰掛けにファスナーテープを貼り付けます。
そして、車いすの操作性を落とさないようにするという視点から、軍手とワーキング手袋を用意しました。
手袋は「少なくとも1部分が、ファスナーテープのチクチクした面に張り付くもの」であればどんなものでも構いません。
この状態で準備完了です。写真の手袋の位置をもう少し下げ、青い部分がしっかりとファスナーテープにくっつけるようにすると安定します。
そして、図のように上から手を入れていきます。
手袋がしっかりと張り付いていることを確認しながら、さらに手を進めていきます。思った以上に軍手の青い部分がピッタリくっついてくれます。
最初は慣れないかもしれませんが、動作そのものはシンプルです。
最後まで指が通れば、ファスナーテープから外せばOKです。まっすぐ引っ張るより、手首を回すようなイメージで外すとやりやすかったです。
ファスナーテープを貼り付けるところから、手袋をはめるところまで、全て片手でできました。「ファスナーテープに張り付く」という条件さえ満たしていれば、ワーキング手袋でもはめることができます。
手袋の新しい古いなどによっては、はめる時に青いゴムの部分を巻き込んでしまうかもしれません。いろいろと試してみることをおすすめします。
動作は軍手の時と変わりません。手首を回転させるような動作で、ファスナーテープから外せば完了です。
この仕組みのメリット・デメリット
準備する段階から片手で作業ができる
前もって予備を用意しておく必要はありますが、万が一ファスナーテープが剥がれてしまったときでも、自分で対応することが可能です。
常にサポートしてくれる人が近くにいてくれるとは限らないので、作業が自分でできるのは魅力的に感じていただけるのではないでしょうか。
安価に実践可能
「今まで手袋無しで外出していた寒さ」が「100円ショップの商品1つ」で解決するのであれば、決して高い買い物ではないはずです。
簡単に試すことができるのもメリットの1つです。
「仕組み」と一緒に行動できる
車いすに仕組みを取り付けるので、「外出先でのはめ直し」が容易です。
車椅子ユーザーではない片麻痺の人の場合、肩掛けカバンなどについているファスナーテープを利用するといった方法が考えられます。
張り付かない手袋は使用できない
残念ながら、全ての手袋に対応可能というわけではありません。作業として可能であれば、ファスナーテープのふわふわした方を縫い付けてもらうなどのやり方で、カバーできます。
貼り付ける部分の痛みが早い
軍手とワーキング手袋、それぞれ5回ずつ試しましたが、貼り付ける部分の痛みが激しかったです。
使用する手袋にもよりますので、具体的に「何回で駄目になる」という話はできませんが、1度作れば半永久的に使用できるものではないことは確かです。
まとめ
今回は「電動車いすを利用している片麻痺の人が、健側の手に手袋をはめる」というテーマで、ファスナーテープを利用したアイデアや、仕組みのメリット・デメリットなどをご紹介しました。
- 外出先でも着け外しができる仕組みが便利
- 常にサポートしてくれる人がいるとは限らない
- デメリットもあることを理解して、導入を検討しよう
最後にお伝えしたいのは、「福祉用品だけが福祉用品ではない」ということです。どこにでもあるような日用品が、アイデア次第でその人にピッタリの道具になることがあります。
「1人でやるのは無理」と考えるのではなく『どうすれば1人でできるか』と考えることで、思いもよらぬアイデアが湧いてくるかもしれません。
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