生活支援員として働いていると、ケース会議に参加する機会があります。状況によってはケース会議を主催する立場になることも…。慣れないうちは「ケース会議のレジュメを書くことになったけど、書き方がわからない」と悩んでしまう人も多いはず
- レジュメ作成のコツが知りたい
- ケース会議を円滑に進めるテクニックを教えて
- 会議が終わったあとの流れを知りたい
そんな要望に答えるため、今回は私が実際にケース会議を主催した経験をもとに、「レジュメの書き方」から「会議後のまとめ資料の作り方」までを、5ステップでまとめました。
この記事は、
・会議を主催する職員さん
・中堅〜ベテランの生活支援員さん
・ケース会議に参加する他職種の人
におすすめです。
レジュメとは
レジュメとはズバリ、「会議全体の流れを大まかにまとめたもの」です。
大まかにまとめたものなので、「コレを読めばすべてが分かる資料」を作るわけではないというのがポイントです。
現実問題として、生活介護事業所に限らず、福祉の仕事は何かと時間に追われがちです。
ケース会議は、ご利用者さんの支援に大きく関わってくることなので、事例によっては資料作りに熱が入ってしまうこともあります。
ですがここは、「大まかな流れがわかればOK」を意識して作っていきましょう。
⇒【関連記事】『生活介護事業所って何? 中の人がわかりやすく解説します』
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ステップ1、会議の目的を決める
「会議の目的も何も、ご利用者さんの支援について検討するんでしょ?」と思うなかれです。
レジュメ作りの方法をマスターするために、まずは会議の方向性を決めることが大切です。ここが決まれば、レジュメの作り方の半分以上が決まったと言っても過言ではありません。
会議には大きく分けて、「情報を共有するタイプ」と「問題について意見を出し合うタイプ」の2種類があると考えています。
①情報を共有するタイプ
あらかじめ支援の内容が決まっている場合や、参加する人の役割が明確に決まっている場合など、一定の方向性がはっきりしている場合はこちらのタイプになります。
比較的短時間で意見がまとまる反面、新しいアイデアなどが反映されにくくなります。
②問題について意見を出し合うタイプ
対象となるご利用者さんの支援方法が決まらない場合や、事例について意見を集めたい時など、方向性を決めるところから始める場合はこちらのタイプになります。
自分では思いつかなかった良いアイデアが出る可能性がある反面、意見が多方面に広がって収拾がつかなくなったり、意見が出ないと空気が重くなってしまうことがあります。
会議というからには、「何のための会議なのか」という目的を明らかにしておく必要があります。実は、この会議のタイプがそのまま目的になるんです。
情報を共有するタイプの場合
「Aさんの支援方法について全体で情報を共有する」
「歩行訓練について担当者を決める」
問題について意見を出し合うタイプの場合
「Aさんのケースについて効果的な支援方法を考える」
「歩行訓練について意見を出し合う」
ステップ2、会議の参加メンバーを決める
会議の目的が決まったら、次は会議の参加メンバーを決めましょう。対象となるご利用者さんの支援に関わる人をピックアップしていきます。
・現在関わっている職員さん
・これから関わって欲しい職員さん
・サービス管理責任者さん
・相談支援専門員さん
・施設の職員さん以外の人(必要があれば)
など、自分が考える「支援に必要な人」が会議の招集対象です。
ステップ3、会議の日時を決める
続いて会議の日を決めていきます。
◯◯日にケース会議、と決める場合もありますし、定例の職員会議などで一緒に議題に挙げる場合もあります。
ここは事例の緊急性や施設の大きさによります。
一例ですが、前章で挙げた人が参加するとしたら、声をかける順はこんな感じはどうでしょうか。
①施設の職員さん以外の人
②相談支援専門員さん
③サービス管理責任者さん
④これから関わって欲しい職員さん
⑤現在関わっている職員さん
私が会議の日程を調整する場合、「もし参加できなかった時に、前もって意見を聞いておくことが難しい順」に声をかけるようにしています。
日程に関しては、「いつがいいですか?」と聞いても話が前に進みにくいので、候補となる日と時間を3〜4パターン決め、そこから選んでもらう方法を取っています。
全員の日程が揃えばいいですが、難しい場合も多いです。その時は事前に意見を聞いておくなどの方法でカバーしつつ、できるだけ参加者が多い日に設定するのが良いでしょう。
ステップ4、テンプレートを作る
目的、参加者、日時が決まったら、いよいよレジュメを作っていきましょう。できるだけ時間を節約するために、自分流のテンプレートを作っておくことを強くおすすめします。
これで、「会議の全体像を決める」⇒「テンプレートに必要事項を盛り込む」というシンプルな流れが完成します。
1ミリも隙のない完璧なレジュメを目指す必要はありません。大切なのは「会議の目的が参加する人に伝わること」です。
そのために、テンプレートを作る時には「会議に参加している人の目線」になってみましょう。
- 資料の表題 (これは何についての資料?)
- 開催日時 (いつの会議?)
- 開催場所 (どこでやるの?)
- 目的 (何のためにやる?)
- 参加者(誰が参加するの?)
- 対象者 (誰についての会議?)
- 検討内容 (どんな方向に進むの? 時間配分は?)
レジュメにこれらの項目が盛り込まれていると、参加する人にとって会議の全体像をイメージしやすくなります。
例えば、「自閉的傾向の強いAさんに、急な予定変更が生じてしまった場合の支援方法を検討する」という内容のケース会議のレジュメを、前章の2つのパターンに分けて作ってみます。
①情報を共有するタイプの会議
支援の方法がはっきりと決まっていて、担当者を決めたり、情報の共有がメインの場合のテンプレートです。必要に応じて自分流にカスタマイズしてください。
ケース会議資料
作成者:生活介護事業所『△△』生活支援員 〇〇
1、日時 2024年 〇〇月✕✕日 15:00〜
2、場所 生活介護事業所『△△』会議室
3、目的 「急な予定変更が生じた時の役割分担を決める」
4、参加者 〇〇(ヘルパーステーション『▲▲』)、〇〇、〇〇(敬称略)
5、対象者 Aさん
6、検討内容
①Aさんについての情報共有 (5分)
②役割の確認と担当者の決定(15分)・絵カード、携帯用ホワイトボードの準備係(1名)
・家庭との連絡(1名)
・伝える係(2名)
③評価の方法の確認(10分)
④その他
②問題について意見を出し合うタイプの会議
支援方法が決まっていなかったり、これから支援の方向性を決める場合の会議のテンプレートです。①同様、必要な部分だけを参考にしてもらえればOKです。
ケース会議資料
作成者:生活介護事業所『△△』生活支援員 〇〇
1、日時 2024年 〇〇月✕✕日 15:00〜
2、場所 生活介護事業所『△△』会議室
3、目的 「急な予定変更が生じた時方法についてアイデアを出し合う」
4、参加者 〇〇(ヘルパーステーション『▲▲』)、〇〇、〇〇(敬称略)
5、対象者 Aさん
6、検討内容
①Aさんについての情報共有 (5分)
②類似の事例や支援のアイデアなどを出し合う(30分)
③検討結果について(10分)④その他
ステップ5、まとめ資料(議事録)を作る
会議が終わったら、議事録を作成します。記憶が新しいうちに作ってしまうのが理想なので、こちらもテンプレートを用意しておきましょう。
- 日時
- 場所
- 参加者
- 対象者
- 議題と結果
話し合った内容を全部書こうとするのではなく、これらの項目を1枚にまとめるように書いていくのがポイントです。
書ききれないほど意見がたくさん出た場合は、似たような意見をまとめるなどして、できるだけ1枚に収めることを意識してみてください。
「ケース会議議事録」
・日時 2024年〇〇月✕✕日 15:00〜15:40
・場所 生活介護事業所『△△』会議室
・参加者 〇〇、〇〇、〇〇(敬称略)
・議題と結果
このうち、「日時」「場所」「参加者」「対象者」については、レジュメを作ったついでに入力しておくと、後々の作業がとても楽になります。
番外編:会議を円滑に進める2つのテクニック
ケース会議に限らずだと思いますが、話し合いの場で様々な意見が出るのはとても良いことです。良いことなんですが、意見がまとまらずに収拾がつかなくなってしまうことがあります。
そこで、会議を円滑に進めるための2つのテクニックをご紹介します。
① グランドルールを書く
ケース会議を進行するうえで、守ってほしいルールを事前に書いておくことで、「なんのための会議なのか」と併せて、「どんな雰囲気の会議か」を伝えることが出来ます。
- 発言はできるだけ短く、わかりやすくまとめて話す
- 専門用語を使う時は、ひとこと解説を添えるなどの工夫をする
- 否定ではなく、肯定の姿勢で
と言った具合です。「参加する立場」での準備について書いた記事と併せて読んでいただければ、ケース会議についてより理解が深まるはずです。
⇒【関連記事】「事例検討会と何が違う?」生活介護事業所のケース会議事情
② 知りたいことを書く
- Aさんにとっての『急に』はどれくらいなのか知りたい
- 言葉以外の伝達方法について意見がほしい
- Aさんの普段の生活パターンを把握したい
など、「具体的に知りたい意見」があれば、レジュメに書いておくことで意見を集めやすくなります。
「書いていいの?」と思われるかもしれませんが、経験上、自分が知りたいことを書いて問題になったことはありません。
実践
仕上げに、意見を出し合うタイプの会議のレジュメに、先程のテクニックを追加したバージョンをご紹介します。
ケース会議資料
作成者:生活介護事業所『△△』生活支援員 〇〇
1、日時 2024年 〇〇月✕✕日 15:00〜
2、場所 生活介護事業所『△△』会議室
3、目的 「急な予定変更が生じた時方法についてアイデアを出し合う」
4、参加者 〇〇(ヘルパーステーション『▲▲』)、〇〇、〇〇(敬称略)
5、対象者 Aさん
6、検討内容
①Aさんについての情報共有 (5分)
②類似の事例や支援のアイデアなどを出し合う(30分)
③検討結果について(10分)④その他
7、主催者より
①知りたいこと
・Aさんにとって『急』とは
・言葉以外の伝達手段はあるか
②円滑な会議進行のためのグランドルール
- 発言は短く、わかりやすくまとめる
- 相手の意見をさえぎらずに話し合う
- 専門用語がわからない時は質問する
まとめ
今回は、「ケース会議のレジュメの書き方」をテーマに、レジュメ作成のポイントを5つのステップに分けてご紹介しました。
- レジュメとは「会議全体の流れを大まかにまとめたもの」
- 時間配分や自分が知りたいことを書き添えるとGood!
- 自分用のテンプレートを用意して、時間を有効に使おう
最後にお伝えしたいのは、レジュメの形に絶対的な正解はないということです。特に慣れていないうちは、「あれも」「これも」と情報を盛り込んでしまいがちですが、あくまでもレジュメは「大まかにまとめる」という意識で作ることが大切です。
ご紹介したテンプレートなどを参考にして、「自分流のレジュメの作り方」を身につけるきっかけにしてください。
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