生活介護事業所の日中活動の種類は様々です。私は、「学び」は生きる力になる!をコンセプトに、障害のある人のための生涯学習講座を10年以上実施してきました。そんな私が今回ご紹介するのは、
点字をテーマにした生涯学習講座
です。点字は視覚に障害がある人が情報を得るためのものですが、その仕組みはとても興味深いものがあります。この記事では、導入からまとめまで、できるだけ細かい流れでご紹介します。
この記事は、
・視覚に障害がある人を担当している生活支援員さん
・点字の魅力をみんなに伝えたいと思っている人
・生涯学習講座のネタを探している生活支援員さん
におすすめです。
点字の魅力についてはこちらの記事をぜひご覧下さい
⇒【関連記事】『生活介護事業所の職員が語る、5つの「点字の魅力」とは?』
【準備】点字の仕組みを知る
この講座は事前の準備が何よりも大切です。まずは自分自身が点字仕組みを理解するところから始めます。点字の魅力についてはこちらの記事をご覧ください。
全てを理解しようと思わず、自分の中に「なぜ?」を見つけ、そこから理解を深めていくと、調べる過程がぐっと楽しくなりますよ。
一例を挙げておきます。
- なぜ6つの点の組み合わせで50音を表現できるの?
- 点字にカタカナとひらがなの区別はある?
- 点字ではない文字は何ていう?
今回はこの中から、「点字ではない文字は何ていう?」という切り口から、「身近なものの中に点字を探してみよう」という流れで展開していきます。
⇒【関連記事】『生活介護事業所の生涯学習講座:5ステップでわかる「講座の流れ」』
【導入】ご利用者さんから「なぜ?」を引き出す
最初の5分くらいが導入部分になります。自分流の導入方法があれば良いですが、慣れないうちは難しいと思いますので、私のやり方をご紹介します。
「今日のテーマは〇〇です。〇〇について、何か知っていることはありますか?」という切り出し方がおすすめです。オーソドックスな展開方法ですが、メインテーマに入りやすいという強みがあります。
こちらが用意している「なぜ?」が出れば、そこから発展させていくことができますし、出なければ「点字ではない文字を何というか知っていますか?」と、ご利用者さんに考えてもらうことができます。
「それは知らなかった」「意外と面白いかもしれない」など、点字の世界に興味を持ってもらえたら万々歳ですが、「点字の世界に興味が出てきましたよね」と無理やり流れに乗せようとしなくても大丈夫です。
【発展①】身近なものの中に点字を探そう
いきなり「身近なものの中に点字を探そう」という流れを作らなかったのには理由があります。
「点字ではない文字を何というか」という切り口から入ることで、「点字」と「墨字」という言葉があることを伝え、理解の前提を揃えることができます。
同じようにやろうと構えず、「10年やってると、これくらいの力量が身につくんだな〜」くらいに思ってもらえればOKです。
今回の流れでは、「どんなところに点字が使われていますか?」と質問し、時間の許す限り答えてもらいましょう。
この時、正誤にこだわってしまいがちですが、すべての意見を「いいね!」で返す意識でいると、「意見を言いやすい空気」が育っていきます。
ぶっちゃけ正誤は絡んできますが、それよりも「質問しよう」と思えたことが何より素晴らしいです。
【発展②】点字のルール(サブテーマ)
ご利用者さんがどれだけ意見を言ってくれるかを完全に把握することは極めて難しいです。時間が足りなくなってしまった場合は「次回も同じテーマでやりましょう」でOKですが、時間が余ってしまった場合には、その場を繋ぐスキルが求められることもあるでしょう。
そこで用意しておくと安心なのが「サブテーマ」です。これもあまり難しく考えず、時間が余ったら「これをやろう」と決めておく感じで大丈夫です。
今回であれば、時間が全く予想できないため、時間が余ったら思い切ってテーマを切り替えます。
「点字のルールを覚えてみましょう」という流れから、調べたことを伝える形だと時間をコントロールしやすいのでおすすめです。
【終わりに】普段の生活に彩りを添える
このテーマであれば、終わり方はシンプルでOKです。読めるようにならなくても大丈夫、と前置きしたうえで、「普段の生活の中で点字を探してみて下さい」と締めくくる方法はいかがでしょうか?
今まで何となく見ていた物の中に、点字があるかもしれない。そう考えるだけで、普段の生活の見え方が変わります。ほんの僅かな違いかもしれませんが、日常生活に彩りを添えるには充分です。
実際、翌日に「家のジャムの瓶に点字があった!」と報告してくれたり、帰りの送迎でご家族さんに「今日は点字の勉強をした」と伝えるシーンに出会うことがありました。
⇒【関連記事】『福祉の現場でのリフレーミングとは?ポジティブシンキングとの違いを解説』
まとめ
今回は、「点字をテーマにした生涯学習講座をやってみよう」というテーマで、実際に生涯学習講座をするときの流れをご紹介しました。
- 自分の中の「なぜ?」を深めると、事前準備が楽しくなる
- 正誤にこだわらず、「意見を言いやすい空気」を育てるイメージで
- サブテーマを用意しておくと時間のコントロールがしやすい
最後にお伝えしたいのは、この通りにやっても上手くいく保証ができないということです。「同じような施設」はあるかもしれませんが「同じ施設」はありません。
ご利用者さんの障害特性やその日のコンディション、担当する生活支援員さんの得意不得意によって、講座の雰囲気は毎回変わります。
「W・I・N」を意識して、ご利用者さんに楽しい時間を過ごしてもらう事が何よりも大切です。
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