生活介護事業所で、ご利用者さんの生活を支える現場の最前線で働く生活支援員。大変そうとは思っても、「何」が「どう」大変なのかを説明できる人は少ないかもしれません。
- 周囲の人に話しても「大変だよね〜」でサラッと流されてしまう
- 身の回りに、現場レベルの生々しい話をしてくれる人がいない
- 生活支援員をしていて、「自分だけが大変と感じているのでは」と不安になる
私自身、生活支援員として15年間、色々な経験をしてきました。「やりがい」というふわっとした言葉でまとめるつもりは一切ありません。(※そもそも「やりがい」は人から与えられるものではなく、自分自身で見つけるものだと思っているので…)
現場の人間のリアルな意見、ぜひ聞いて下さい。
この記事は、
・これから生活支援員として働く人
・就職/転職活動中の人
・現役の生活支援員さん
におすすめです。
予想外の行動に翻弄される
身体障害、知的障害などの障害種別に関わらず、障害のあるご利用者さんの日中活動の場である生活介護事業所では、常に予想外の出来事が起こるといっても過言ではありません。
- 今の今まで笑顔だったのに、突然表情が険しくなり、周囲のものを壊し始めてしまった
- 急に走り出し、運転中の掃除機のコードに噛み付いてしまった
- 話した内容と全く違う内容で伝わってしまい、ご家族さんから苦情の電話がかかってきた
など、第一声が「え? なんで?」となってしまう行動が起こります。
あくまでも私の経験ですが、予想外の行動は、まるで狙っていたかのように「起こってほしくないタイミング」で起こってしまうことが多いです。
行動学に基づいたデータの分析などで、ある程度行動を予想することは可能ですが、100%ではありません。生活支援員は常に「予想外の行動が起きるかもしれない」という緊張感の中で仕事をすることになります。
良くも悪くも、自分の「常識」が通用しない
生活支援員には柔軟な発想が必要です。特に、自分の気持ちを言葉で表すのが苦手なご利用者さんには、「〇〇に違いない」という思い込みを捨てて向き合うことが大切です。
例えば、汗ばむほどの陽気なのに、厚着をしているご利用者さんがいたとします。
この時、「暑かったら脱げばいい」という考えでいると、「脱いでないから暑くないに違いない」と思い込んでしまうかもしれません。
ですが、実際には
- 「暑い」と言い出せない
- 「暑さ寒さ」を感じるのが苦手
- 今着ている服を着なければならないと感じている
- 「暑い」と「服を脱ぐ」がつながらない
- 服の脱ぎ方がわからない
などの理由があるかもしれません。ご利用者さんの「言葉にならない言葉」を考えながら仕事をするところが魅力でもあるのですが、大変な部分でもあります。
⇒【関連記事】『福祉の現場でのリフレーミングとは?ポジティブシンキングとの違いを解説』
職員の介護観の違いで溝が生まれる
上司や同僚など、職員同士で介護観が合わないことも大変だなと感じるところです。
極端な例ですが、「ご利用者さんの要望に、先回りして応える」事を大事にしている職員と、「ご利用者さんの要望が出るまで待つ」事を大事にしている職員とでは、ご利用者さんの接し方にかなりの違いが出ます。
他にも、ご利用者さんとの距離感は「できるだけ近い方がいい」と考えるか、「少し離れたところから見守るくらいがちょうどいい」と考えるかでも、接し方に差が出ます。
ご利用者さん一人ひとりに作られる「個別支援計画」によって、支援の方向性は決まります。ですが、職員間の小さな差の積み重ねが、大きな溝になってしまうこともあるのが辛いところです。
「ご利用者さんの気持ち」と「ルール」の間で板挟みになる
これもリアルすぎる話になってしまいます。
生活介護事業所は、ある程度の集団生活の場です。基本的にはご利用者さん一人ひとりの気持ちが尊重されますが、「集団生活であるがゆえのルール」が存在します。
例えば、待つことが苦手なご利用者さんにとっては、送迎車が出発するまでの待ち時間は苦痛に感じてしまいます。頭ではわかっていても、感情をコントロールすることができないと、自分や他の人を傷つける行動を取ってしまうことも考えられます。
そうかと言って、送迎車の出発時間は決まっているため、待てない人がいるからと言って時間を早めるわけにもいきません。
ご利用者さんの気持ちとルールの板挟みになってしまうのが大変なところです。
人手不足の負のスパイラルが止まらない
これは生活介護事業所の生活支援員に限ったことではありませんが、職場が人手不足の状態になってしまうと、とにかく余裕がなくなってしまいます。
・人手が足りず、その場の支援で手一杯になり、施設の掃除などに人手を割く余裕がなくなる
↓
・掃除が行き届いていないことで、気持ちに余裕がなくなる
↓
・職員の余裕の無さが、ご利用者さんに伝わって、不安定になってしまう
↓
・より多くの支援が必要になるが、人手が足りない…
どこかでこの負の連鎖を打破しなければならない、とわかっていても、なかなか状況が改善しないまま時間だけが過ぎていくことも何度か経験しました。
心にも身体にも余裕を持って支援ができなくなるのは、生活支援員として辛く感じてしまいます。のんびり息抜きができる時間はとても大切です。
一度腰痛になると完全復帰が難しい
生活支援員の仕事は大きく2つ。見守りや、支援方法の組み立て、行動の分析や予測などの「頭を使う仕事」と、ご利用者さんの体に直接触れる「体を使う仕事」です。
体を使う仕事に関しては、トイレ介助や入浴介助、ベッドや車椅子への移乗など、腰に負担のかかるものが多いです。
毎日行う仕事だけに、一度腰を痛めてしまうと完全復帰が難しいのが大変です。
⇒【関連記事】『介護職のための、声かけ技術がもたらす腰痛予防方法とは?』
まとめ
今回は、「生活支援事業書の生活支援員」というテーマで、仕事のココが大変、というところをご紹介しました。
- 常に「予想外の出来事」に備える精神的な大変さ
- 職員との関係性
- 身体介護に関する肉体的な大変さ
など、生活支援員の仕事の大変なことも多いです。では、なぜ私は生活支援員として働いているのでしょう。自分自身に問いかけてみました。
私は、何かを提案をするのが好きです。また、「できない」が『できる』に変わるための方法を探したり、「どうやったらわかってもらえるか」という仕組みを考えるのも好きです。そういったところが、生活支援員の仕事にマッチしているのかなと感じました。
この記事が、アナタの参考になりますように。
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