ABAにおける「望ましい行動」とは?|現役生活支援員の実践例

強度行動障害を学ぶ
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ABA(応用行動分析)について学んでいると、
「望ましい行動」という言葉が出てきます。

私は最初、この言葉に少し違和感がありました。

誰にとっての望ましい行動なのか、
と思ってしまったからです。

ですが、現役の生活支援員として働きながら、
ABAについて学びを深める中で、
「その人らしく生きていける行動」
なのではないかと考えるようになりました。

今回は、私が考える「望ましい行動」について、
支援現場での具体的な場面をイメージしながら考えてみたいと思います。


この記事を読むと

・ABAにおける望ましい行動について大まかにわかります
・支援者都合の行動になってはいけないことがわかります
・一人ひとりにとっての「望ましい行動」があることがわかります

私が考える「望ましい行動」の定義

私が考える望ましい行動とは、
「その人らしく生きていくための行動」です。

支援者目線で、ご利用者さんを見るのではなく、
ご利用者さん目線で、環境との関連を見ることが、
必要だと考えています。

例えば、嫌なことが合った時に、
自分で自分の顔を叩いてしまうご利用者さんがいたとして、
「支援者にとって、〇〇さんの顔を叩く行動をやめること」が望ましい行動ではなく、
「〇〇さんにとって、顔を叩かずに周囲に伝える方法を身につけること」が望ましい行動です。

「顔を叩かないようになる」という方向性の違い

先程のご利用者さん(Aさん)を例に、支援のプロセスを考えてみましょう。

支援者としては、ご本人がけがをしないことや、
あるいは周囲のご利用者さんが不安にならないことを目的に、
顔を叩かないような働きかけをすることがあります。

気持ちを逸らす活動の提案や、
顔を叩く行動をやめるように伝える声かけなど、
実践されている人も少なくないと思います。

決してそれ自体は悪いことではありません。
ですが、顔を叩く行動が嫌なことを伝えるために起こっているのだとしたら、
顔を叩くことだけを止めても、
ご本人の「嫌だ」という気持ちは残ったままです。

また、本人にとっては、
顔を叩くことが自分の気持ちを伝える数少ない手段になっている可能性もあります。

つまり、Aさんにとっては、
「顔を叩かなくても、『嫌だ』という気持ちを伝えられる方法はないだろうか?」
を考えることが支援になります。

ただ注意して制止するのか、替わりの行動を伝えるか、
ゴールは同じでも、支援の方向性は大きく変わります。

※実際には、顔を叩く行動の背景や機能は人によって異なります。けがの危険がある場合は安全の確保を優先しながら、行動の前後の状況や本人の状態を丁寧に確認していく必要があります。

望ましい行動は、人によって違う

同じような場面であっても、
望ましい行動は一人ひとり異なります。

例えば、自分の要求を伝える方法を考える場合でも、
言葉で伝えることが得意な方もいれば、文字やカード、
ジェスチャーのほうが使いやすい方もいます。

最近では、タブレット端末を活用した伝達方法なども広がりつつあります。

また、施設の環境や、通所するご利用者さんの顔ぶれによっても変わるので、
「こうすれば正解」という方法を一つに決めるのではなく、
その人の特性や生活環境に合わせて考える必要があります。

私が望ましい行動を考えるときに、
大切だなと感じているのは次の3つの視点です。

1.同じような意味を持っているか

そのご利用者さんが身につけるのは、
課題がある行動と、同じような意味を持っているでしょうか。

例えば、先程のAさんのケースであれば、
「嫌という気持ちを伝える」という意味が含まれているかを、
確認することが大切です。

行動を変えることだけを目的にするのではなく、
その人らしく伝えられる行動かを考えたいと思います。

2.社会的に妥当性があるか

本人の気持ちを大切にすることと、
周囲との関係を考えることは、
どちらか一方だけで成り立つものではありません。

Aさんの場合であれば、「顔を叩く」という行動は、
周囲の関係性に影響を与えてしまうことがあります。

本人の意思が伝わりやすくなり、
周囲とのやり取りがスムーズになるなど、
本人にも意味のある方法であることが大切です。

3.日常生活に自然に馴染めるか

せっかく身につけた行動も、
特定の支援者がいるときだけ使える方法では、
生活の中で活用できる場面が限られてしまいます。

最初から「さまざまな場面、さまざまな支援者」を、
想定するのは難しいのかもしれませんが、
最終的には本人が普段の生活の中で使いやすく、
さまざまな場面で活用できることが好ましいと思います。

そして、本人にとって無理のない形で生活に馴染んでいくことも、大切な視点だと考えています。

私の実践例

絶対の正解ではありませんが、
私の実践例をお伝えしたいと思います。

Bさんは、発話がなく、
日中は車いすを利用しています。

トイレやお茶を要望する際など、
支援者に何かを伝えたい時に、周囲の状況に関わらず、
大きな声を出してしまいます。

周囲への影響なども考え、
「支援者に伝える」という意味を持った行動を、
複数の支援者で話し合って考えました。

支援のプロセスは割愛しますが、
現在は、「支援者に近づき、右手で自分の左手の指を指す」
という行動で伝えることができています。

親指は「コーヒー」、人差し指は「テレビ」など、
徐々に伝えるサインを増やしている最中です。

大きな声を出す行動そのものは、
現在でも完全に収まったわけではありませんが、
Bさんらしい行動が増えているのではと感じています。

まとめ:その人らしく生きていくために

私が考える「望ましい行動」とは、
その人らしく生きていくための行動です。

そのためには、目の前の行動を単に止めたり、
支援者の望む行動に置き換えたりするのではなく、
「なぜ、その行動が起こっているのか」を考えることが出発点になります。

もちろん、実際の支援では、安全面への配慮や周囲の環境など、
さまざまなことを考える必要があります。
簡単に答えが出ない場面も少なくありません。

私もまだまだ学びを深めているところですが、
これからも、目の前の行動だけで判断せず、
その背景にある理由を考えながら、
一人ひとりに合った支援を探していきたいと思います。

※ABAの基本的な考え方や、行動の4つの機能については、こちらの記事でも紹介しています。

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