障害福祉の現場で支援をしていると、
- 大きな声を出してしまう
- 物を投げてしまう
- 自分や他の人を叩いてしまう
といった行動に出会うことがあります。
支援する側としては、
「どうしたら、この行動を減らせるんだろう?」
と考えるのではないでしょうか。
そこで今回は、ABA(応用行動分析)の考え方の一つとして知っておきたい、
「代替行動」について、知識ゼロからでもわかりやすく解説します。
そもそも「ABAって何?」という方は、まずはこちらの記事からどうぞ。
専門家による解説ではないことをご承知の上、
”学びを深めている途中の生活支援員としての考え”としてお読み下さい。
この記事を読むと
・代替行動について、大まかに理解することができます
・行動の持つ意味を考える視点が身に付きます
・「こうすれば伝えられる」という方法があるわけではないことがわかります
そもそも「代替行動」って何?
耳慣れない言葉かもしれませんが、
「だいたいこうどう」と読みます。
そして、代替行動とは、
ある行動を、別の行動に置き換えることです。
この場合の「ある行動」とは、
暴力や異食など、
”適切ではない行動”を指します。
それと同じ役割(機能)を果たしつつ、
社会的に受け入れられる、別な行動に置き換える。
これが代替行動です。
実例でお話します
これは私が実際に経験した事例です。
Aさんは、発話がなく、
「1人でいる時に、顔を叩いてしまう」という行動がありました。
支援者が近づくと、その行動は収まります。
本来であれば、顔を叩く行動は、
支援者に何かを伝えるための行動ではありません。
そのため、”伝える”のと同じ行動をもった、
別の行動に置き換える支援を実施しました。
支援の方法については後述しますが、
現在Aさんは、何かを伝えたい時、
「自分から支援者のところへ行く」
という行動を取ることができるようになりました。
「困った行動」には、何か理由がある
ここで、ABA(応用行動分析学)の考え方を少しだけ見てみましょう。
ABAでは、行動そのものだけを見るのではなく、
「その行動が、どんな場面で起きて、その後どうなっているのか」
ということを考えます。
たとえば、先程のAさんの、
「1人の時に、自分の顔を叩いてしまう」
という行動で考えてみましょう。
顔を叩いている時に、支援者が近づき、
「やめましょう」と制止することが続いているとします。
するとAさんにとって、
自分の顔を叩く → 支援者が対応してくれる
という経験が積み重なっている可能性があります。
私も含め、つい原因を特定しようとしてしまいがちですが、
大切なのは、
その行動には、本人なりの何らかの役割や目的があるかもしれない
と考えてみることです。
この「行動の役割・目的」をABAでは行動の機能と呼びます。
代替行動は「行動の機能」を意識する
私自身、まだまた学びの途中なのですが、
代替行動を考えるうえで、とても重要なのが、
「行動の機能」を意識することです。
ABAでは、行動に4つの機能があると考えます。
機能①「要求」
欲しいものや、やりたい活動を獲得するための行動です。
断定することはできませんが、
「何かを提供すると、その行動が収まる」のであれば、
要求の機能を含んでいるかもしれません。
例:大きな声を出す ⇒ おやつを提供する ⇒ 声が収まる
機能②「回避・逃避」
やりたくない行動から逃れるための行動です。
これも断定はできませんが、
「その行動をしなくて良くなると、収まる」のであれば、
回避や逃避の機能が含まれているかもしれません。
例:活動中に髪をかきむしる ⇒ 活動を中止する ⇒ かきむしりが収まる
機能③「注目」
誰かを呼ぶ。関わりを求めるための行動です。
肯定的な関わりだけでなく、叱責や注意なども含めて
「自分に関わってほしい(注目してほしい)」という目的で起こる行動です。
こちらも、断定はできませんが、
「支援者が関わると、その行動が収まる。(逆に、離れると繰り返す)」場合は、
注目の機能が含まれているかもしれません。
例:自分の腕を噛む ⇒ 人が来る ⇒ 噛む行動が収まる
機能④「感覚」
他者との関係性ではなく、行為そのものから得られる感覚や刺激を得るための行動です。
これも断定はできませんが、
「いつでも、どこでもその行動をしている場合」は、
感覚の機能が含まれているかもしれません。
例:活動と活動の間の時間に、その場で飛び跳ねている 等
伝え方に「絶対の正解」はない
ここは、代替行動を考えるときに特に大切なところですが、
伝え方に絶対の正解はありません。
それを踏まえたうえで、
あくまでも私が経験した事例についてお話したいと思います。
※繰り返しになりますが、専門家の解説ではないことを承知の上、
現場の支援員のエピソードとしてお読み下さい。
Aさんの場合
行動の機能について考える
まずは、行動の機能について考えました。
「顔を叩く」⇒「人が近づく」⇒「行動が収まる」
という状況だったので、
おそらく「注目」や「要求」の機能が含まれているのではないかと考えました。
Aさんの特性を理解する
Aさんは表情は豊かですが、発話がありません。
こちらの言葉は、ある程度伝わっているようですが、
筋道立てて考えることは極めて苦手なのかな、という印象でした。
淡々と「どうしましたか?」
Aさんが顔を叩いている場合は、
淡々と「どうしましたか?」と尋ねるようにしました。
逆に、声を荒げて注意したり、
気持ちを逸らすための関わり方は、
一切しないようにしました。
Aさん目線で、
「顔を叩いても、特に何も起きない」
と感じてもらいたかったからです。
「ありがとう」作戦
もう1つ、Aさんが顔を叩いていない時には、
積極的に「ありがとう」を伝えるようにしました。
・トイレを教えてくれてありがとう
・(近くに)来てくれてありがとう
・(席や部屋を)動いてくれてありがとう
これを繰り返すことで、
次第にAさんの方から近づいてきてくれるようになりました。
現在も、顔を叩いてしまう行動は続いていますが、
その頻度は、施設利用時から著しく減少しました。
もちろん、私の関わりだけで改善したわけではありません。
ABAが万能というわけでもありませんが、
上手く噛み合えば、一定の効果が出ることもある、と思えた経験でした。
まとめ|「代わりにどうする?」を考えてみよう
今回紹介した「代替行動」を簡単にまとめると、
今起きている”適切ではない行動”の代わりに、
同じ役割を持った”別の行動”を身につけてもらうこと
と言えます。
私も含めて、支援の現場では、
「〇〇しないで下さい!」
と伝えたくなる場面もあります。
でも、そこで一度立ち止まって、
「この人は何を伝えたいんだろう?」
と考えてみる。
それだけでも、支援の見え方が少し変わってくるかもしれません。
ABAの考え方は、専門家だけが使うものではありません。
日々の支援の中で「どうしてこの行動が起きているんだろう?」と考えるところから、少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。
もっとABAを学びたい方へ
ここまで読んで、
「もう少しABAについて勉強してみたい」
「行動の見方や支援について、体系的に学んでみたい」
と思った方もいるのではないでしょうか。
私自身もまだまだ学びの途中ですが、
ABAについて学ぶために読んでいる書籍を5冊紹介します👇️




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